秋の牝馬戦線、波乱の香りが漂う一戦がやってきました。 アイルランドトロフィー(旧名称:府中牝馬ステークス)は、G1「エリザベス女王杯」へとつながる重要な前哨戦です。2025年からは別定戦のG2として開催されます。
舞台となる東京芝1800mは、能力が素直に反映されやすいコース形態ですが、近年は波乱含みのレースとして知られています。そ
の証拠に、過去20年の分析によると、1番人気は3勝のみで複勝率は65%に留まり、対照的に4番人気が最多の7勝を挙げています。さらに、単勝オッズ20~49.9倍の馬でも4勝を挙げていることから、上位人気に固執せず明確な買う理由がある穴馬を探し出すことが定石と言えるでしょう。
押さえておくべきレース傾向
- 脚質: 極端な逃げや追い込みは不利。自在性のある先行・中団差しが安定。
- 枠順: 内外で大きな有利不利はなく、当日の馬場状態のほうが重要。
- 血統: ディープインパクト産駒の勝利数が多く、雨が降ればSadler’s Wellsなど欧州血統にも注意が必要。
これらの傾向を踏まえ、出走予定馬の中から“オッズに反映されていない可能性”を秘めた穴馬を3頭選び、各馬のポテンシャルと仮説を深掘りします。
【穴馬候補①】ラヴァンダ | 左回りの東京で能力全開へ

注目ポイントと深掘り仮説
- 証明済みの東京巧者ぶり 2024年秋華賞4着、2025年阪神牝馬S3着、そして昨年の府中牝馬S3着など、格上挑戦で善戦を続けてきた実力馬。特筆すべきは東京コースでの実績で、2024年のフローラSでは2着に好走しています。中村調教師は「左回りの東京が一番向いている」とコメントしており、右回りでは見せるコーナーでモタつく癖が解消され、能力をフルに発揮できる舞台です。
- コースに噛み合う瞬発力と自在性 阪神牝馬Sでは、勝ち馬とタイム差なしの3着に入り、メンバー中最速の上がり32秒台を記録。秋華賞や府中牝馬Sでも後方から鋭い末脚を繰り出しましたが、あと一歩届かないレースが続いていました。中団からでも捲りやすく、長い直線で末脚を発揮しやすい東京芝1800mは、この馬の瞬発力が最大限に生きる絶好の舞台と言えるでしょう。
- 実績と人気のギャップ 3勝クラス勝ちからの格上挑戦という経歴や重賞未勝利というレッテルから、過小評価される可能性が高い一頭。しかし、その内容はG1・G2でも互角に渡り合えることを証明済みです。斤量も実績馬より1~2kg軽い54kgで出走できる可能性が高く、人気が上がらないのであれば絶好の狙い目となります。
ラヴァンダの結論
近走の敗因は展開や右回りコースでの位置取りによるもの。舞台が最適な東京に替わることで、パフォーマンスを大きく上げてくる可能性を秘めています。追い切りでも坂路4F51.6秒、ラスト2F11.8–11.9秒の切れ味を見せており、軽ハンデも味方に一発を警戒すべき穴馬です。
【穴馬候補②】アンゴラブラック | 3連勝の勢いと時計的裏付け

注目ポイントと深掘り仮説
- 時計面の優秀さという“物差し” 現在3連勝中と勢いに乗る上がり馬。その内容が濃く、バーデンバーデンCでは前半1000mが59秒0というハイラップを好位で追走し、1分59秒3の好時計でハナ差差し切り勝ち。この勝ち時計は、同条件の重賞と比較しても遜色のないハイレベルなもの。さらに、2勝クラス・野島崎特別では、その年の皐月賞・中山金杯に次ぐ年間3番目の好時計を記録しており、時計的な裏付けは十分です。
- 自在性のあるレース運び 前走は内枠1番からロスなく立ち回る正攻法の競馬で勝利。先行しても中団からでも競馬ができる器用さは、展開に左右されにくい大きな武器です。脚質に有利不利が出にくい東京コースでは、この自在性が安定感につながります。
- 血統的な後押し 父キズナは東京芝1800mで複勝率40%超と好相性。成長力のある血統背景からも、キャリア6戦のまだ奥深さを感じさせます。重賞初挑戦で「荷が重い」と見られて人気を落とすようであれば、血統妙味の観点からも狙う価値は十分にあります。
アンゴラブラックの結論
格上挑戦という見えない壁が人気を抑える要因ですが、その実力は時計という客観的なデータの上では既に重賞級。自在性のあるレースぶりも府中で求められる資質と合致しており、勢いそのままに重賞の壁を突破しても何ら不思議はありません。
【穴馬候補③】ホウオウラスカーズ | 7歳でも侮れない末脚のキレ

注目ポイントと深掘り仮説
- 年齢による人気の盲点 7歳牝馬というだけで、多くのファンは「上がり目がない」と評価を下げがちです。しかし、この馬は4歳春まで入着すらなかった“晩成型”で、ここ1年で本格化。前走の京成杯AHでは、単勝89.5倍の13番人気という低評価を覆して重賞初制覇を飾りました。この激走がフロック視されるなら、妙味はさらに増します。
- 証明済みの末脚 京成杯AHの勝利は、内枠と展開の利があったとはいえ、メンバー最速の上がり33.1秒を記録した末脚の鋭さが最大の勝因。過去には芝1800m戦で上がり32秒台を繰り出した実績もあり、距離延長は問題ありません。東京の長い直線で脚をためる展開になれば、再びあの切れ味が炸裂するでしょう。
- ベテランならではの強み 経験を積みながら良化してきたタイプであり、精神面の安定感は若い馬にはない武器です。ペースが落ち着きやすいこのレースはスタミナの消耗も少なく、末脚勝負に持ち込めば年齢の壁を越える可能性を秘めています。
ホウオウラスカーズの結論
前走で見せた末脚は本物。年齢から人気を落とすことは必至ですが、東京の広いコースでスムーズに脚を溜める形になれば、再び高配当を演出するだけの能力を秘めています。
その他の注目馬とレース全体のまとめ
注目すべき人気馬の実力
上記の3頭以外にも、サフィラは注目が必要です。春の阪神牝馬Sを、マイル戦歴代2位タイとなる1分32秒8の好時計で制覇。その際、後半800m45.3秒、上がり600m33.4秒という厳しいラップを好位から押し切った内容は高く評価されています。ヴィクトリアマイルで大敗して人気を落とすなら、この馬も穴候補に浮上します。
一方、カナテープやセキトバイースト、アドマイヤマツリ、ボンドガールといった有力馬は実績・近況ともに安定しており、当然上位人気になるでしょう。しかし、データが示す通り、このレースは1~3番人気の信頼度が決して高くないことを忘れてはなりません。
最終結論:アイルランドトロフィーは“理由ある穴”を狙え
アイルランドトロフィーは、毎年のように伏兵が台頭する難解な重賞です。だからこそ、人気の盲点となる成長株や適性馬を拾えるかが鍵となります。本稿の分析からは、以下の3頭を推奨します。
- ラヴァンダ:東京で能力全開へ。末脚は重賞級で、左回り替わりと斤量差を味方に一発も。
- アンゴラブラック:3連勝の勢いと時計実績は本物。自在性のある脚質も府中向き。
- ホウオウラスカーズ:年齢で人気落ちなら妙味。東京の直線で末脚が炸裂すれば再度波乱を演出。
過去のデータが示す波乱傾向と、各馬が秘めるポテンシャルを照らし合わせると、上記3頭はいずれもオッズ以上の価値を持つ可能性があります。人気馬に死角があると感じた時こそ、これらの穴馬を馬券に組み込むことを検討してみてはいかがでしょうか。
