MBS賞スワンステークスは秋のマイルチャンピオンシップへの前哨戦にあたる1400mの別定GⅡです。例年、人気薄の馬が上位に突っ込んでくる波乱傾向が強く、1番人気と2番人気が揃って馬券圏外に敗れることも珍しくありません。過去10年で見れば1番人気の勝利はわずか2回で、むしろ2番人気が4勝と最も勝ち星を挙げています。10番人気以下の伏兵が度々馬券に絡んでおり、「オッズに反映されていない要素」を丁寧に拾うことが高配当への近道と言えます。
コースは京都競馬場芝1400m外回り。スタートは向正面奥からで、最初のコーナーまで長い直線があり、直線半ばには高低差約4mの緩やかな坂を上り下りします。後半の下りで一気にペースが加速するため先行・差しどちらの脚質も通用する一方、ラストの長い直線で瞬発力が求められることが多いです。枠順では2枠が4勝と最も好成績で、逆に4枠は不振。血統面ではディープインパクト系・ロードカナロア系・ミッキーアイル系の産駒が勝ち星を挙げており、1400mでの勝率が高い馬や3歳馬が活躍しています。
本稿では予想オッズで人気になりにくい3頭を「穴馬候補」として取り上げ、過去のデータや血統、近走内容から深掘りします。そして最後に筆者が最も注目する馬を選びます。
過去データから見る穴馬の条件

3歳馬・1400m巧者が好成績
過去10年の年齢別成績では3歳馬が勝率17.6%・連対率35.3%と優秀で、1400m戦で勝率6割超の馬が7頭も勝っています。若さと距離適性を兼ね備えた馬が穴を空ける傾向が強いです。
血統トレンド
勝ち馬の多くがディープインパクト・ロードカナロa・ミッキーアイル産駒で、該当産駒は連対率も高いです。とくにロードカナロア産駒は前述のディープ系より人気落ちになることが多く、穴候補として妙味があります。
脚質は差し・追い込み
京都外回りの長い直線では差し・追い込み勢が強く、過去10年で差し馬が4勝、追い込み馬も複数回連対しています。先行勢は馬券圏内に粘るが勝ち切るのは難しく、終いの脚がしっかりしているタイプを狙いたいです。
前走成績が悪い馬の巻き返し
前走で6着以下に敗れていた馬の方が好走例が多いです。人気を落とす要因となり、条件替わりや調整次第で一変する可能性があります。
枠順・馬体重
2枠が4勝、外の8枠も複数連対と偏りが見られる一方、4枠は苦戦しています。また前走から馬体重の増減が±3kg以内の馬が好成績で、体調管理がカギとなります。
騎手・厩舎
過去10年で岩田康誠騎手が2勝を挙げ、4勝の関西厩舎(栗東所属)の馬が強いです。相性の良い騎手が騎乗する穴馬にも注目したいです。
スワンステークス2025 穴馬候補

穴馬候補①: アサカラキング
アサカラキングはキズナ産駒の5歳牡馬で、3歳時から1400mを中心に堅実に走ってきた先行タイプ。2024年の阪急杯では大外16番枠から逃げて2着と粘り込み、その後もオープン特別で好走を続けて重賞戦線に加わった。京都1400mは脚質が合う上に、鞍上の岩田康誠騎手は同レースで過去2勝を挙げる名手である。
1400mでの高い持続力が持ち味で、過去の1400m成績は4勝2着2回で連対率60%超と高いです。京都外回りでは長く良い脚を使えるので、逃げても後続に脚を使わせる展開に持ち込めれば残り目がありそうです。夏のスプリント重賞では持ち味を出せず人気を落としていますが、得意の1400mに戻れば巻き返しが期待でき、前走負けた馬の巻き返しが多いデータにも合致します。父キズナ(ディープインパクト産駒)は京都外回りへの適性が高く、自身も馬体の増減が少ないタイプで調整面の不安が少ないです。
穴馬候補②: レッドモンレーヴ
レッドモンレーヴはロードカナロア産駒の6歳牡馬で、2023年の京王杯スプリングCを制した強力な差し馬。母ラストグルーヴはディープインパクトの全妹で、瞬発力に優れる血統背景を持ちます。長めの休養を挟みながらキャリア20戦5勝、獲得賞金は約1億8千万円。しかしここ数戦はマイル戦などで着外が続き、評価が急落しています。
父ロードカナロアの産駒は本レースで複数勝ちを挙げている血統で、レッドモンレーヴ自身も京王杯SCで高速決着を差し切って重賞初制覇。距離適性は高いです。近走は二桁着順が続いたが、いずれも最後の脚は使っており、上がり3Fは33秒台前半と速いです。京都の長い直線で末脚が活きれば一変する可能性があり、前走大敗からの巻き返しデータにも合致します。高速決着に対応する体力があるため、京都の良馬場でも時計勝負に耐えられます。
穴馬候補③: オフトレイル
オフトレイルはイギリス生まれのファー産駒で、ゴドルフィン所有の4歳牡馬。生涯成績は14戦3勝、2024年のラジオNIKKEI賞(芝1800m)を最下位追走から大外一気で差し切り初重賞制覇を達成した。同年のスワンSでは3歳ながら2着と健闘し、その後の阪神カップでも3着に入っています。今年は不振続きで人気が急落しています。
2024年のスワンS(同コース)で17頭立て6番人気から2着に好走し、続く阪神カップでも3着。重賞級相手に連続で上位争いしており、コース適性は高いです。ラジオNIKKEI賞では最後方から速い上がりで差し切っており、京都の外回りは末脚勝負になりやすいため相性が良いです。父Farhhは欧州でマイル〜中距離を得意としたG1馬で、4歳秋を迎える今年は上積みが見込めます。1400mに戻る今回は好条件であり、特に前走差し届かなかったオーシャンSからの距離延長は好材料です。
その他の注目馬
穴候補以外では3歳馬アドマイヤズームが今回も人気の中心となる。昨年の朝日杯フューチュリティSの勝ち馬であり、1400m初挑戦ながらスピードと操縦性の高さが評価される。
重賞実績豊富なランスオブカーズも自在性が魅力で、3歳馬ながら古馬相手に互角以上の競馬をしている。短距離GⅠで連続好走しているウインマーベルも無視できない。
まとめ

3頭の穴馬候補の中で筆者が最も注目するのはオフトレイルです。昨年の同レースで2着に健闘し、その後も阪神カップ3着と1400m重賞で好走を続けました。今年に入り敗れていますが、それにより人気が大きく落ちることは間違いありません。京都外回り1400mは末脚勝負になりやすく、ラジオNIKKEI賞で見せた豪脚が再び炸裂する可能性があります。英国産の遅咲き血統で4歳秋の成長が見込める点や、前走からの距離延長が好材料である点も心強いです。オッズ10倍以上の伏兵であれば積極的に狙ってみたい一頭と言えるでしょう。
アサカラキングやレッドモンレーヴも展開や馬場次第では上位を脅かす存在です。前者は先行勢が残れる展開で粘り込み、後者は差し決着となった際に強烈な末脚を繰り出します。本レースは過去に10番人気以下の大穴も馬券になっており、今回も過去データとコース特性を踏まえて思い切った穴狙いが報われる可能性が高い。複数の穴馬に目を配りつつ、好走パターンに合致する馬を中心に馬券戦略を練りたいところです。
