競馬ファンの中には「WIN5を全通り買えば、いつかは絶対に当たるんじゃないか?」と考えたことがある人も多いでしょう。
確かに、5レースすべての組み合わせを買えば“理論上は”どんな結果でも的中します。
しかし、問題はその「必要資金」と「現実的に勝てる条件」です。実際に全通りを購入した場合、どれほどの金額が必要なのか、そしてどんな状況ならプラスになる可能性があるのかを冷静に分析することで、WIN5の本質が見えてきます。
この記事では、WIN5を全通り買う場合の点数計算、必要資金、過去の的中配当データ、そして“全通りでも勝てる条件”について詳しく解説します。理論とデータの両面から、「夢の全通り買い」は果たして現実的なのかを検証していきましょう。
各レースの出走頭数を入力すると、
必要な金額と回収ラインが自動で計算されます。
WIN5を全通り買うと何点になる?点数の計算方法と費用は?
WIN5の全通り買いは、対象レースの出走頭数によって必要資金が大きく変動します。ここでは、考えられる代表的な5つのシナリオ別に、必要な投資額(=回収に必要な配当額)をまとめました。
| ケース | 各レースの頭数 (例) | 組み合わせ点数 | 必要金額 (回収ライン) |
|---|---|---|---|
| ① フルゲートMAX | 18-18-18-18-18 | 1,889,568 点 | 1億8,895万6,800円 |
| ② 荒れそうな日 | 16-18-15-16-17 | 1,175,040 点 | 1億1,750万4,000円 |
| ③ 標準的な日 | 12-16-10-14-15 | 403,200 点 | 4,032万円 |
| ④ 堅そうな日 | 10-12-9-11-13 | 154,440 点 | 1,544万4,000円 |
| ⑤ 少頭数メイン | 9-9-9-9-9 | 59,049 点 | 590万4,900円 |
※「必要金額」は「組み合わせ点数 × 100円」で計算。この金額を上回る配当が出なければ利益にはなりません。
WIN5の組み合わせ点数(通り数)は、対象となる5レースそれぞれの出走頭数をすべて掛け合わせることで求められます。例えば各レースで選択可能な馬の数が以下の場合、全通りの点数は次のようになります。
フルゲートの場合(各レース18頭立て): 18 × 18 × 18 × 18 × 18 = 1,889,568通り 全レース10頭立ての場合: 10 × 10 × 10 × 10 × 10 = 100,000通り
上記の通り、最大で約189万通りもの組み合わせが存在し、最小でも各レースの頭数によっては数万通り規模になります。
1点あたりの金額は100円なので、購入費用は「組み合わせ数 × 100円」で計算できます。仮に全レースがフルゲート18頭だとすると、全通り購入に必要な金額は約1億8,895万6800円にもなります。
ではもう少し現実的な例を見てみましょう。たとえば2022年6月26日(宝塚記念の日)のWIN5では、各レースの出走頭数が「16頭、16頭、10頭、16頭、18頭」でした。この日の全通り点数は、16 × 16 × 10 × 16 × 18 = 737,280通り。組み合わせ数737,280通りに対し、1点100円なので必要資金は約7,372万8,000円になります。
仮に各レースの出走頭数が9頭ずつだった場合、全通り点数は59,049通りです。1点100円なら590万4,900円の資金で全通り購入できます。頭数が少ないと必要資金は一気に下がりますが、その分当たりやすくなるため配当も低く抑えられる傾向があります。
全通り買いで勝てる条件とは?払戻金が購入費用を上回るのが条件

結論から言えば、WIN5を全通り購入して勝つ(プラス収支になる)ための条件はただ一つ、払い戻し金額が購入費用を上回ることです。言い換えると「払戻金 > 馬券代」になれば勝ち、逆なら負けになります。
前述のように、実際のWIN5では全通り購入に平均して約7,300万円以上の資金が必要です。したがって払い戻しがこの7,348万円を超えなければ、全通り買いはトリガミ(取り返し損)になり赤字です。
WIN5全通り買いの損益分岐点
では、払い戻しが高額になりやすいのはどんな場合でしょうか?ポイントはWIN5の的中票数(当たり馬券の口数)にあります。WIN5の払戻金は、その週の売上の70%を的中者で山分けするパリミュチュエル方式です。売上金額を仮に平均の7.5億円とすると、70%にあたる約5億2,500万円が配当原資になります。この金額を的中者数で割ったものが1票あたりの配当です。
的中者が1人(1票)なら配当は約5億2,500万円となり、全通り購入資金(約7,300万円)を大きく上回ります。 的中者が7人(7票)だと1票あたり約7,500万円。ギリギリ全通り購入の採算ライン付近です。 的中者が8人以上になると、配当は7,300万円を下回る計算になります。
つまりWIN5を全通り買いしてプラスにするには、的中票数がせいぜい7票以下、理想を言えば1〜3票程度の超難関状況が必要です。要するに「ほとんど誰も当てられない荒れた結果」が条件です。「全通り買えば自分は必ず当たる」ものの、他の人も多数当たってしまうと配当が安くなり赤字になるわけですね。
1番人気が飛ぶ大波乱が勝利のカギ
少人数しか的中しない状況とは、具体的には人気馬が総崩れになる大波乱の展開です。特に各レースの1番人気馬が次々敗れるようなケースでは、生き残るWIN5の組み合わせが一気に減ります。
実際、歴代最高配당となった2021年3月14日のWIN5では、金鯱賞で断然1番人気のデアリングタクトが最低人気のギベオンに敗れる大波乱となり、一気に残り票が減りました。さらに次のフィリーズレビューでも8番人気が勝ち、最終的に残ったのはわずか1票だけ。この結果、払戻金は5億5,444万6060円という空前の高額になったのです。
逆に、人気サイドで順当に決着するほど的中者が増えて配当は低くなります。2018年10月8日にはWIN5史上最低となる6,050円という配当も出ました。このような「超堅い」結果では、全通り買いすれば数千万円の馬券代に対し数千円の戻りしかなく、大赤字は確実でしょう。
全通り購入で損するパターンとは?

上述の通り、WIN5全通り買いが儲からない大半のパターンは、配当が購入費用を下回るケースです。典型的なのは人気決着で配当が低く、多数の的中者が出た場合です。
最近のケースでは2023年11月26日のWIN5が挙げられます。この日は配当は10万2,610円に留まりました。的中票数は5,703票にも上り、1人当たり10万円程度の払い戻しです。全通り購入に必要だった馬券代は約7,787万円。しかし戻ってくるのは10万円ちょっとですから、約7,777万円のマイナスという途方もない損失になります。
- 配当102,610円
- 的中票数5,703票
- 全通り購入費用約7,787万円
- 配当2,847,290円
- 的中票数157票
- 全通り購入費用約5,875万円
本命決着や数百万円〜1,000万円台の中途半端な高配当では、全通り購入はほぼ確実に大きな損失を生みます。WIN5の平均配当(数千万円規模)ですら、平均的な購入費用(約7,300万円)を大きく下回ります。勝つためには、よほどの大波乱による「億超え配当」を引き当てる以外に道はない、というのが現実です。
また、配当が数百万円程度のケースも危険です。例えば2023年11月19日は配当284万7,290円・的中157票でしたが、この日の全通り購入費用は約5,875万円で、結果5,590万円以上の赤字でした。同様に、1,000万円台の配当でも全通り購入だとほぼ負けが確定します。
要するに、本命サイドの結果や中途半半端な高配当では全通り購入はほぼ確実に損します。WIN5の平均配当は数千万円規模ですが、それでも全通り購入額(約7,300万円)と比べると分が悪いのです。勝率を上げるには、よほどの大波乱による「億超え配当」を引き当てる必要があるわけです。
過去の全通り購入シミュレーション結果:勝率はわずか3割強
WIN5開催10回分で全通り購入したシミュレーションでは、以下のような結果が出ています。
的中(プラス収支):10回中3回(勝率33%) 未的中(マイナス収支):10回中7回 払戻金合計:約7億2,466万6,890円 馬券購入合計:約7億3,489万8,000円 トータル収支:-1,023万1,110円(約1,000万円の赤字)
このシミュレーションでは、幸運にも3回は億超え配当などでプラスになったものの、トータルでは約1,000万円のマイナスになりました。全通り買いは理論上必ず的中する反面、収支面ではギャンブル性が極めて高く、現実的には期待値が低い戦略と言えます。
過去の高額配当事例:全通りならプラスだったレースもある

とはいえ、「全通り購入が勝てるケース」が皆無というわけではありません。過去には「全通り買いしていれば大幅プラスになっていた!」というレースも確かに存在します。その多くは歴代高配当ランキングに名を連ねるような超大波乱の回です。
歴代最高配当ベスト5に見る“全通り勝利”の可能性
JRAのWIN5歴代高額払戻金ランキング上位5件を見てみましょう。
1位 2021年3月14日 5億5,444万6060円 (1票) 2位 2021年1月11日 4億8,178万3190円 (1票) 3位 2019年2月24日 4億7,180万9030円 (1票) 4位 2024年10月6日 4億6,836万5660円 (1票) 5位 2024年11月10日 4億6,496万3450円 (1票)
ご覧の通り、配当が4億円を超えるような回は的中者が1人しかおらず、1票あたりの払い戻しが何億円にも達しています。これらの回に全通り購入していれば、必要資金は多くても数千万円から1億円程度ですので、いずれも莫大なプラスになっていた計算です。
2023年9月24日のWIN5は、各レースの勝ち馬人気順が「12番人気 → 15番人気 → 6番人気 → 3番人気 → 4番人気」という大波乱で、的中はわずか1票。配当は約4.28億円に達しました。この日の馬券代はおそらく6,000万円前後で、払い戻しとの差引は+3億6千万円以上と推定されます。このように、「全通りでも勝てる」ケースは確かに存在しますが、それは極めてまれな超高配当の時だけなのです。
キャリーオーバーは狙い目?期待値アップの条件
WIN5にはごく稀にキャリーオーバー(繰越金)が発生することがあります。キャリーオーバーが発生すると次回は配当原資が増えるため、普段より高配当が出やすい状況になります。理論上、キャリーオーバー発生週に全通り購入すれば期待値向上が見込めるとも言えます。
しかし、過去の傾向を見るとキャリーオーバー発生時に限って堅い決着が続いているのも事実です。「キャリーオーバーだから全通り買いすれば儲かる」という保証はなく、あくまで波乱が起きることと配当原資が多いことの両方が重なって初めて期待値が上がると言えます。
全通り購入で勝つ現実的なケースは?独自視点で分析

以上を踏まえると、現実的に「WIN5を全通り買って勝てる」ケースは非常に限られていることが分かります。ロジカルに条件をまとめると以下のようになります。
極端な高配当になる週であること。目安として配当7,300万円超(売上約7.35億円で的中7票以下)が必要です。 複数の波乱レースが含まれること。2レース以上で人気薄が勝利し、なおかつ他のレースも本命が飛ぶくらいでようやく的中票数が一桁になるイメージです。 1番人気馬の凡走。特に支持率の高い1番人気が敗れると残り組み合わせが一気に減ります。 出走頭数のバランス。適度に頭数が少ないレースが混ざっていると購入点数を抑えられます。
以上の条件が整うのは稀であり、年に何度もあるものではありません。さらに言えば、その荒れる日を事前に見抜くのは困難です。宝くじ感覚で一発狙う以外、現実的な攻略法とは言い難いでしょう。
結論として、WIN5を全通り買って勝てるのは、“宝くじに当たる”ようなごく稀なケースだけです。
まとめ:WIN5全通り購入の夢と現実

WIN5は5レースの1着馬を全部当てる馬券種で、高配当の魅力がある反面、当てるのは極めて難しい券種です。
全通り購入するには数千万円〜1億円以上の資金が必要です。
全通り買いしても勝てる条件はただ一つ、払い戻しが購入費用を上回ることです。超大波乱でほぼ誰も当たらない時だけが狙い目です。
全通り購入で損するパターンは圧倒的に多く、特に順当決着で配当が低い時や的中者が多数出た時は確実に赤字になります。配当が数千万円程度でも購入費用に届かず大損となるケースがほとんどです。
過去の高配当事例では、全通り購入が大幅プラスになり得たケースもありますが、そのような回は極めて稀です。
期待値が上がる条件としては、1番人気が敗れるレースが複数出ること、大波乱で的中者がごく僅かになることなどが挙げられますが、条件を揃えるのは難しく運の要素が大きいです。
現実的な結論として、WIN5全通り購入はギャンブル性が高すぎて推奨できない戦略です。プロの予想家や的中経験者も、資金に合わせて買い目を工夫しています。WIN5の魅力と難しさを正しく理解し、賢い戦略で一攫千金のチャンスに挑んでください。
